プロダクト概要
ウイスキーとブランデーの共通点とは?
実は製造工程は大まか同じです。原料となる糖質の液体を醸造し、蒸溜したものを木樽に入れて熟成させる、この部分が同じ。
では、ウイスキーとブランデーの違いとは?その、原料となる糖質が穀物なのか果物なのかです。大麦、小麦、コーン、ライ麦などの穀物を使うとウイスキー。ブドウ、りんごなどのフルーツを使うとブランデーになります。シードルを蒸溜して樽熟成したものがアップルブランデーです。
アップルブランデーの歴史は人類が蒸溜機を発明した後だと思われます。
蒸留 – Wikipedia
ですが、この分野日本ではあまり普及していません。なぜか、明治維新以降、様々な洋酒が日本に入ってきますが、アップルブランデー最高峰のカルヴァドスは門外不出とされ、産地であるノルマンディ地方から、一歩たりとも出てはいけないというあり得ない法律の統制下にあったのです。時代のせいでなかなか日本には伝わらなかったかもしれません。
カルヴァドスとは、フランス、ノルマンディ地方カルヴァドス県で造られるアップルブランデーの事で余りにも秀悦な為、他の産地のアップルブランデーと一緒にされず産地名を名乗れる原産地呼称名称の事です。1713年、カルヴァドスの人気が圧倒的になりそうな頃、それに嫉妬したコニャック生産者組合が時の国王ルイ14世に懇願し「りんごを原料とするアルコール飲料は産地から出荷してはいけない。」という法律を作らせました。もの凄い政治力です。コニヤック生産組合どんだけお金使ったの?それが解除されたのが フランス革命の1789年、たとえ解除されたとしても、流れはそう簡単に動き出しません。
動いたのは第二次世界大戦。ヒトラー率いるドイツ軍はフランス北部を侵略し進行。
先陣をきった兵隊たちは、ブルターニュ地方とノルマンディー地方に秘蔵されたカルヴァドスや、アップルブランデーの禁断の美味しさを知ったのです。そして更にそのドイツ軍からフランスを奪還するべくフランス、イギリス,アメリカ連合軍がドーバー海峡を渡って、ノルマンディーへ上陸しました。これが映画にもなったノルマンディー上陸作戦です。
ノルマンディー上陸作戦 – Wikipedia
この地方以外のフランス人でさえも飲んだことが無かったカルヴァドスの味をこの連合軍の隊員たちがいきなり知ってしまったのです。だから、ここからなんですアップルブランデーが世界に羽ばたくのは!
青森県内ではなんと、4つのアップルブランデー蒸溜所があります。
A- Factory (エーファクトリー)さん
https://jre-abc.com/wp/afactory/
モホドリ蒸溜研究所さん
https://www.mohodori.com/
CRAZY CIDER (クレイジーサイダー)さん
https://crazy-cider.co.jp/
ニッカウヰスキーさん
https://www.nikka.com/
りんごの加工品の価値を最高に高めるのがアップルブランデーだと確信している当研究所は、先の4社に続くべく来月、アップルブランデーの試験蒸溜に入ります。ただ、販売目的の蒸溜ではなくデータ収集の為の試験蒸溜。やってみたい事があるんです。
もりやま園さんの摘果果汁と
https://moriyamaen.jp/
大きなくりの木の下でさんにあります。
https://www.facebook.com/opengardenookinakuri/
https://www.instagram.com/non.osawa/#
樹齢400年の梨の果汁でブランデーを造りたいのです。
昨日、改めてこの梨の様子を見に行きました。大澤さんご夫婦に食べてみたらと言っていただけたので、かじりました。なかなか、包丁で切れないくらい硬い!ぼそぼそした繊維の歯ざわりで水分は少なめ、うっすらと甘い、苦みはあり。酸はほとんどないんだけど、なんか、地味深い味がする。複雑なミネラル感があります。この樹、でかいからな~!!根の長さも400年分あるんだろうな。一見の価値ありですよ!!
この果汁と摘果果汁が相まって、どんなブランデーが出来るのか楽しみです。ブランデー用の収穫は来月ですね。
おおよそ400年前、江戸時代が始まりの頃からこの地に立つこの梨の木は当時は貴重な甘みとして人々の栄養源になったはずもしかしたら津軽為信も食したかもしれない。
津軽為信 – Wikipedia
そんな、壮大な実験を始めます。
参考文献
CALVADOS BOOK カルヴァドスブック
クリスチャン・ドルーアン、白須知子 たる出版
2023年11月11日追記
当研究所は2023年10月11日からアップルブランデーの仕込みに入りました。場所は弘前工業研究所。
https://www.aomori-itc.or.jp/soshiki/kou_hirosaki/
モホドリ蒸溜研究所の(https://www.mohodori.com/)吉岡さんにアシスト頂きスタート。まずは、白神酵母を使って
酒母を作りました。ベースに使ったのは平川市大きなくりの木の下でさんの
りんごジュース。今、絶賛酵母培養中です。来週にはもりやま園さんの
摘果果汁でもろみを作っていきます。ちょうどドラム缶1本分。白神酵母は活動がゆっくりらしく蒸溜は11月1日の予定です。今朝、大きなくりの木の下でさんでこちらの梨を収穫してきました。待ちに待った、樹齢400年の梨。ブランデーに一緒に入れます。どんな味わいになるのかドキドキしています。
2023年10月17日
5時間かけて梨を搾汁しました。平川市が誇る、樹齢400年の梨。こんな貴重な経験ってないよなー。400年の間、私の先祖の誰かがこの梨を一個もらって食べたかもしれないし。妄想自由。
私がアップルブランデーに梨を入れたかったのは、複雑さを出したかったから。苦みや渋みが欲しかった。常識では想像できないレベルの偶然で生まれる味わいを飲んでみたい。この梨りんご箱に半分くらいを5時間かけて絞って、6ℓの果汁が取れました。飲みます。想像したより甘いです。カットしながらつまんでたのですが、甘さを求めてはいなかったので不意打ちです。エレガントで素敵な余韻です。この後、もりやま園さんの摘果果汁と合わせ酵母を入れて醸造段階へ入ります。
2023年11月1日
人生初!蒸溜!!!感慨深い一日でした。
私、ウイスキー大好きなんです。ブランデーもジンもウォッカもアクアビットもビールもワインもシードルもアブサンも日本酒も紹興酒もなんでも大好きなんです。その時のシチュエーションで何を飲もうか悩みまくる時間が大好きなんです。その為にさまざまなお酒の勉強、沢山してきました。
だから、自分が蒸溜機の前にいる事に興奮します。
本当は理系の夫も一緒に参加する予定でしたが仕事があり断念。文系の私、彼の分もがんばりました。弘前工業研究所にモホドリ蒸溜研究所の移動式蒸溜機を設置窯の中に2週間かけて醸造した摘果果汁と400年生の梨の果汁のもろみを投入。
熱源は電気(7500W)で蒸溜スタート。4つの小さな窓は連続式蒸溜機のセル。内部の気圧と温度を確認しながら待つこと1時間30分!っ、最初の蒸溜液が出て来ました。めちゃくちゃ古風な酒精計で計ると60%。感動。すごくいい香りです。そこしずつアルコール度数は下がり、2時間かけて31%の蒸溜液が34ℓ取れました。この工程を繰り返しましもろみ100ℓを蒸溜していきます。この蒸溜機は移動式でかわいいんです。もろみ30ℓ入ります。
フランスのノルマンディやブリュターニュ地方では各農家さんを小さな蒸溜機が巡回して歩きその家のりんごでできたもろみをブランデーに蒸溜してくれる職業があったそうです。なんて素敵な世界なんだろう。暑さで落ちたりんごや鳥の被害にあったりんごの果汁を集めイースト菌を入れておき、蒸溜屋さんが来たら「うちにもよって頂戴」と声をかけ蒸溜している間タルトタタン食べてるおじさんが目に浮かぶ。
酒税法ができる前の話だと思うからもうこんなことはできないと思うけど、これって、ものを粗末にしないつつましさだと思う。なぜ、お酒が生れたか穀物や果物はアルコールにする事ができたから。
過剰に穫れた作物の貯蔵として塩漬け、砂糖漬けがあるけど穀物が余ったらビールにし、果物が余ったらワインにする。そしてビールが飲みきれなかったらウイスキーにし、ワインが飲みきれなかったらブランデーにする。折角、実ったのだから捨てたくないそれがウイスキーになりブランデーになったと思っています。実は最先端のSGDsでした。今後、50%以上まで蒸溜していき木樽熟成について考察します。